韓国経済はいま二つの顔を見せています。輸出は5月に877.5億ドルと月間で過去最大を記録し、1年前より53.2%伸びました。ところが同じ月の就業者数は17カ月ぶりに初めて減りました。半導体が押し上げた輸出好況と、雇用・内需の鈍化が同時に表れ、「K字」の流れがはっきりしてきたのです。ちょうど本日(6月30日)に5月の産業活動動向が発表されるため、発表を前に韓国経済の全体像を数字で整理してみます。

要点まとめ

  • 5月の輸出は877.5億ドル(前年同月比+53.2%)で過去最大、貿易収支は269.5億ドルの黒字。半導体輸出が169.4%急増してけん引。
  • 5月の就業者は2,916万人で前年同月比4.0万人減少。2024年12月以来17カ月ぶりの初の減少で、若年層への打撃が特に大きい。
  • 政府の診断(企画財政部の6月グリーンブック)は「輸出好調・心理改善で回復の流れは続くが、物価上昇・雇用鈍化で民生への負担が懸念される」とまとめられます。

輸出はなぜ過去最大を記録したのか

5月の輸出は、半導体という一品目が事実上押し上げた記録的な実績です。産業通商部が6月1日に発表した5月の輸出入動向によると、5月の輸出額は877.5億ドルと月間ベースで過去最大を記録し、前年同月より53.2%増えました。関連統計が整備されて以降、指折りの高い伸び率です。貿易収支は269.5億ドルの黒字となり、1〜5月の累計貿易黒字は約1,019億ドルと、すでに過去の年間最大記録を上回りました。

主な原動力は半導体です。5月の半導体輸出は前年同月比169.4%増と、過去最高の水準を記録しました。半導体を除く他品目の伸びが16%前後だった点をふまえると、全体の輸出増加分の相当部分はメモリーのスーパーサイクルから生まれた形です。企画財政部も6月グリーンブックで「半導体・コンピューター・船舶の輸出拡大」を好調の背景に挙げました。

雇用はなぜ17カ月ぶりに崩れたのか

輸出と違い、雇用は1年半ぶりに初めて後退しました。5月の就業者数は2,916万人で前年同月比4.0万人減り、2024年12月以来17カ月ぶりの初の減少です。15歳以上の就業率は63.3%と0.5ポイント下がり、失業率は2.9%と0.1ポイント上がりました。

とりわけ若年層への打撃が大きいです。15〜29歳の就業者は25.5万人減り、2021年1月以来で最大の減少幅となり、若年就業率は43.8%と2.4ポイント下がりました。産業別に見ると、製造業の就業者が14万人減った一方でサービス業は24.8万人増え、負担が製造業と若年層の雇用に集中する姿です。

物価と為替はどうなっているのか

物価と為替は依然として民生を圧迫する変数です。5月の消費者物価は前年同月比3.1%上がり、政府目標(2%)を上回りました。基調的な流れを示すコア物価も2.5%上昇しました。生活物価指数は3.3%上がり、体感の負担はより大きくなりました。企画財政部は、中東情勢に伴う石油類価格の上昇を物価を押し上げた主因に挙げました。

為替も揺れました。6月中にウォン・ドル相場は一時1,550ウォン台まで上がった後、政府の緊急市場状況点検と安定措置を経て1,517ウォン前後まで下がりました。政府は、高い為替は輸出よりも輸入物価を刺激して内需・物価に負担を与えうるとして懸念を示し、物価対応のタスクフォースを稼働中だと明らかにしました。

本日発表の産業活動動向、何を見るか

本日発表される5月の産業活動動向は、生産・消費・投資の「実体経済の温度」を示す指標です。直前の4月指標は振るいませんでした。企画財政部グリーンブックに盛り込まれた4月の産業活動動向を見ると、全産業生産が前月比0.6%減少し、鉱工業生産-0.7%、サービス業生産-1.0%、小売販売-3.6%、設備投資-3.6%と、生産・支出がいずれも後退しました。ただし景気一致指数と先行指数の循環変動値はともに上がり、回復への期待を残しました。

本日の発表で確認すべきポイントは明確です。5月に消費者心理が改善した分だけ小売販売が反発したか、半導体好況が鉱工業生産にもつながったか、そして設備投資が息を吹き返したかです。発表された具体的な数値は、国家データ処(旧統計庁)の公式資料でご確認いただくことをお勧めします。

総評

いまの韓国経済は「輸出は熱く、民生は冷たい」非対称な回復局面にあります。半導体が押し上げた輸出と貿易黒字は過去最大級ですが、その温もりは雇用・内需・物価へ十分に広がっていません。企画財政部も6月グリーンブックで「景気回復の流れは続くが、物価上昇・雇用鈍化で民生への負担が懸念される」とし、「下振れリスク」に代えて「不確実性」という表現を選びました。

今後押さえるべきポイントは三つです。第一に、半導体に偏った輸出が他業種や雇用へ広がるか。第二に、3%台の物価と1,500ウォン前後の為替が下半期の内需にどんな負担を与えるか。第三に、本日発表される5月の産業活動動向が4月の不振を断ち切るかです。政府は今年の成長率を2.5%前後と見ていますが、その質は輸出と内需の差が縮まるかにかかっています。

※ 本稿は情報提供を目的としたものであり、投資助言ではありません。

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